僕は若い頃、若干太った娘と付き合っていた。
もちろん彼女とて食事制限をしたり、食材宅配をとったりしてカロリーの制限は心がけていたのだが
体質的にどうしても太ってしまうのである。
とても良い娘だったが、一つ堪らなく嫌なことがあった。
彼女は何かというと、僕に「細い娘の方が良いよね」と言ってきた。
彼女のコンプレックスは相当なものだった。
ただ、おそらく細い人はその反対だろう。
僕だって、もう少し身長があれば、と、未だに思う時もある。
考えてみれば、それは、誰しも生まれた時からの十字架だ。
ただ、それがあるから人生は面白いともいえる。
そういえば、友人が癌で亡くなる一ヶ月前に、こんなことを僕に言ったことがある。
「俺の躯って、弱っちくて、あんまり出来は良くなかったけど、今振り返ると、こんなにも愛しい躯なかったと思う」
人間動けなくなってはじめて自分の身体に何のコンプレックスも感じなくなるものなのか?
おそらく、五体満足に動ける時は、自分の身体の良さなんかわからないものかもしれない。